「枠物語」と言われる形式の代表的な小説をまとめています。
１つの物語の中に、複数の小話や物語が展開する形式の枠物語。
そんな、小説の枠構造をとった形式の代表的な作品を掲載しています。
枠物語とは！？
枠物語とは、物語の中に物語があり、入れ子構造になっている形式のことを言います。
この形式をとった小説の代表作に「千夜一夜物語」や「デカメロン」があります。
以後、それらの作品を意識（模倣？）した作品が多く生まれ、文学形式としても１つの特徴的な形式となりました。
「枠内物語」「額縁小説」「フレーム・ストーリー」などと形容されることもあります。
【枠物語】小説 一覧
「千一夜物語」 豊島 与志雄, 渡辺 一夫, 岡部 正孝（著）
イスラム世界の説話集
枠物語の手法で描かれた代表的な物語の一つ
「アラジンと魔法のランプ」「シンドバッドの冒険」「アリババと40人の盗賊」「空飛ぶ絨毯」など..
「デカメロン」 ボッカッチョ（著）
イタリア・ルネサンス期の巨人の世界文学史上不滅の古典
全訳決定版の第１弾
14世紀イタリアのフィレンツェ。ペストが蔓延する中、森の館に避難した男女10人が、面白おかしい話で、10日の間、語り合う100の物語。毎日、交代で面白い物語を話して聞かせることになった。「十日物語」とも表現される。
「カンタベリー物語」 G. チョーサー（著）
中世イギリス最大の詩人・チョーサーの代表作
４月のある日、身分も職業も様々な29人の巡礼が、サザークの旅籠に顔を合せた。カンタベリーへの道中、当時のイギリス社会の縮図というべき顔ぶれが、順番に話をすることになり！？・・
「エプタメロン」 ナヴァル女王マルグリット（著）
フランス・ルネサンス期の文学
デカメロンの枠物語の形式を模倣した短編小説の傑作
フランス版「デカメロン」の全72話からなる完訳版
「七日物語」ともいう。ナヴァル女王マルグリットは、フランソワ１世の姉。
邪欲に燃え狂う僧侶、愛欲に盲目になる王、わが子と奸淫を犯す貴婦人。権威をはぎとられた赤裸々な人間像を描いた作品。
「ペンタメローネ」 ジャンバティスタ・バジーレ（著）
ヨーロッパで最初の本格的な昔話集
枠物語として「デカメロン」に、民間説話集として「グリム童話集」に比肩する作品
「五日物語」とも言われる。１０人の語り女たちが、５日に渡り競ってまくしたてる５０の物語。ボッカチオの「デカメロン」に触発されて書いたという作品。
「フランケンシュタイン」 メアリー・シェリー（著）
女性作家が書いた最も哀切な “怪奇小説”
三重の枠組み構造になっている枠物語
天才科学者・フランケンシュタインは、ついに、人造人間を生み出すことに成功する。しかし、誕生した生物は、醜悪な姿のため、フランケンシュタインに見捨てられる。やがて、知性と感情を得た「怪物」は、人間の愛と理解を求めるが拒絶される。そして悲劇が！？・・
「嵐が丘」 E・ブロンテ（著）
“最後のロマン主義作家”と言われる作家の「世界の三大悲劇」のひとつ
枠物語の形式を採用した壮大な愛憎劇
ヨークシャの荒野に立つ屋敷〈嵐が丘〉。主人が連れ帰ったヒースクリフは、屋敷の娘・キャサリンに恋をする。しかし、キャサリンは、隣家の息子と結婚する。ヒースクリフは、失意のなか失踪するが！？・・
似たような形式の小説
注目！「イスタンブル、イスタンブル」 ブルハン・ソンメズ（著）
【2018年】EBRD（欧州復興開発銀行）文学賞 受賞作
クルド系トルコ人作家による傑作トルコ文学
東西が溶け合う美しい街・イスタンブルと、その地下で彼らを襲う残酷な現実ーー
イスタンブルの地下牢獄の一室。学生のデミルタイ、温厚なドクター、気難しい床屋のカモが閉じ込められていた。そこに、老人キュヘイランが加わる。彼らは、疫病を避け、家に閉じこもり、物語を話し合った「デカメロン」のように物語り合い！？・・
「無限角形 1001の砂漠の断章」 コラム・マッキャン（著）
実話を基にした中東和平版 千夜一夜物語
1001の短い章からなる斬新な形式
パレスチナ人のパッサムとイスラエル人のラミ。２人の住む世界は隔絶しているが、パッサムの娘がゴム弾の犠牲になり、ラミの娘が自殺テロに巻き込まれ亡くなった時、２人の人生が交錯し！？－－
ハイブリット・フィクション（フィクションとノンフィクションの融合）
「幻影の書」 ポール・オースター（著）
物語を巡る物語
その男は死んでいたはずだったーー
監督で俳優のへクター・マンは、何十年も前、映画界から忽然と姿を消した。その妻からの手紙に「私」はとまどう。へクターは生きているのか。彼が消し去ろうとしている作品とは！？・・